美術品等についての減価償却資産の判定

7-1-1 「時の経過によりその価値の減少しない資産」は減価償却資産に該当しないこととされているが、次に掲げる美術品等は「時の経過によりその価値の減少しない資産」と取り扱う。(昭55年直法2-8「十九」、平元年直法2-7「二」、平26年課法2-12「一」により改正)

(1) 古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの

(2) (1)以外の美術品等で、取得価額が1点100万円以上であるもの(時の経過によりその価値が減少することが明らかなものを除く。)

(注) 1. 時の経過によりその価値が減少することが明らかなものには、例えば、会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として法人が取得するもののうち、移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであり、かつ、他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものが含まれる。

2. 取得価額が1点100万円未満であるもの(時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなものを除く。)は減価償却資産と取り扱う。

美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ

美術品等(絵画や彫刻等の美術品のほか工芸品などが該当します。以下「美術品等」とう。)が減価償却資産に該当するかの判定は、平成26年12月19日付「法人税基本通達等の一部改正について」等が発遣され、取扱通達(法基通7-1-1等)の改正が行われ、平成27年1月1日以後取得する美術品等は新しい取扱いが適用されています。
 このFAQは、歴史的価値を有し、代替性のないもの(古美術品、古文書、出土品、遺物等)に該当しない美術品等が、減価償却資産に該当するかどうかの判定について、その改正内容等を周知するため、寄せられた主な質問に対する回答を取りまとめである。
今回の通達改正の経緯や趣旨等については以下を参照してください。

改正の概要

Q1. 今回の通達改正の内容はどのようなものですか?

A. 改正前の通達の取扱いでは、 美術関係の年鑑等に登載されている作者の制作に係る作品であるか、 取得価額が1点20万円(絵画にあっては号当たり2万円)以上であるかにより、美術品等が減価償却資産に該当するかどうかを判定していました。
しかしながら、美術関係の年鑑等は複数存在しその掲載基準がそれぞれ異なるのではないか、また、20万円という金額基準は減価償却資産かどうかを区別する基準としては低すぎるのではないかといった指摘があったため、美術品等の取引価額の実態等についての専門家の意見等を踏まえ通達の改正を行いました。
改正後の通達では、取得価額が1点100万円未満である美術品等は原則として減価償却資産に該当し、取得価額が1点100万円以上の美術品等は原則として非減価償却資産に該当するものとして取り扱うこととしました。
なお、取得価額が1点100万円以上の美術品等であっても、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当する場合は、減価償却資産として取り扱うことが可能です。

(注)取得価額が1点100万円未満の美術品等であっても、「時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなもの」は、減価償却資産に該当しないものと取り扱われます。

平成27年1月1日以後に取得する美術品等の取扱い

Q2. 取得価額が1点100万円以上である美術品等は原則、非減価償却資産ですが、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」は、その取得価額が100万円以上であっても減価償却資産と取り扱うこととされています。「時の経過によりその価値が減少することが明らかな」美術品等とは、具体的にはどのようなものが該当しますか?

A. 取得価額が1点100万円以上である美術品等であっても、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」として減価償却資産に該当するものとしては、例えば、次に掲げる事項の全てを満たす美術品等が挙げられます。

  1. 会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として取得されるものであること。
  2. 移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること。
  3. 他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。

なお、この例示に該当しない美術品等が「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当するかどうかの判定は、これらの事項を参考にするなどして、その美術品等の実態を踏まえて判断することになります。

Q3. 当社は、平成27年1月1日以後に美術品等を取得しましたが、平成27年3月決算期(平成26年4月1日~平成27年3月31日)において、改正後の通達の取扱いにより減価償却費の計上はできますか?

A. 平成27年1月1日以後に取得する美術品等のうち、改正後の通達の取扱いによって減価償却資産に該当するものについては、その取得をした日以後の期間に係る減価償却費の計上が可能です(経過的取扱い)。
なお、お尋ねのように、事業年度の中途で取得し、事業の用に供した場合の減価償却資産の償却限度額は、当該事業年度の全期間の償却限度額を月数按分した金額になります(法令59①)。

平成27年1月1日より前に取得した美術品等の取扱い

Q4. 平成27年1月1日より前に取得し改正前の通達の取扱いにより非減価償却資産に該当していた美術品等について、通達改正後に再度判定を行った結果、減価償却資産に該当することとなった美術品等はどのように取り扱うことになりますか?

A. 今回の通達改正は過去に遡って資産区分の変更を行うものではありませんので、改正後の通達の取扱いにより資産区分を減価償却資産へ変更する美術品等については、平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度(以下「適用初年度」といいます。)から減価償却を行うことになります。
また、この場合の償却方法は、その美術品等を実際に取得した日に応じて旧定額法、旧定率法、定額法、250%定率法又は200%定率法によることになりますが(法令48①、48の②)、取得日を適用初年度開始の日とみなすこととして定額法又は200%定率法を選択できるほか、中小企業者等にあっては租税特別措置法第67条の5(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)の規定を適用することもできます(経過的取扱い)。

これを表で示すと次のとおりとなります。

※ 表のはみ出した部分はスクロールしてご覧ください。

美術品等の取得日 原則的取扱い 平27.1.1に取得したものとみなす場合の取扱い
平19.3.31以前 旧定額法又は旧定率法 旧定額法又は旧定率法
平27.1.1現在、中小企業者等に該当する法人にあっては、
30万円未満の美術品等について一括償却可(措法67の5)
(注)一事業年度当たり300万円の上限あり
平19.4.1~平24.3.31 定額法又は250%定率法
平24.4.1以後 定額法又は200%定率法

Q5. 平成27年1月1日より前に取得した美術品等について、耐令第3条第1項に規定する中古資産の耐用年数は適用可能ですか?

A. 平成27年1月1日より前に取得した美術品等の償却方法はQ4.のとおりです。したがって、改正後の通達の取扱いにより資産区分が変更となる美術品等については、その取得日を実際の取得日か適用初年度開始の日のいずれかにより選択し、減価償却を行うこととなりますので、耐令第3条第1項に規定する中古資産の耐用年数は適用できません。

Q6. 平成27年1月1日より前に取得した美術品等について、適用初年度において、減価償却資産の再判定を行わなかった場合、その後の事業年度において減価償却はできなくなるのでしょうか?

A. 改正後の通達の取扱いは、平成27年1月1日以後に取得する美術品等について適用され、同日前に取得した美術品等については、なお従前の取扱いによることとした上で、平成27年1月1日より前に取得した美術品等であっても、[Q4]にあるとおり、適用初年度に減価償却資産に該当するかの再判定を行い、減価償却資産に該当することとなった美術品等に限り、その適用初年度以後の事業年度において減価償却を行うことができるとしたところです。
お尋ねのように、適用初年度において減価償却資産の再判定を行わなかった美術品等については、従前の取扱いのとおり、減価償却を行うことはできないことになりますのでご注意ください。

Q7. 絵画や彫刻などの美術品等で減価償却資産に該当するものの法定耐用年数は何年ですか?

A. 減価償却資産に該当する美術品等の法定耐用年数は、それぞれの美術品等の構造や材質等に応じて、耐令の別表第一に掲げる区分に従って判定することとなります。例えば、その美術品等が「器具及び備品」の室内装飾品に該当する場合には、次のとおりとなります(法令13、耐令別表第一)。

  1. 室内装飾品のうち主として金属製のもの … 15年
    例えば、金属製の彫刻
  2. 室内装飾品のうちその他のもの … 8年
    例えば、絵画・陶磁器・彫刻(主として金属製のもの以外のもの)

Q8. 絵画を購入した場合、その絵画の額縁は美術品等の取得価額に含まれますか。このほか、美術品等の取得価額に含まれるものには、どのような費用がありますか?

A. 一般的に、額縁はその絵画の一部として取得価額に含まれるものと考えられます。
また、購入した減価償却資産の取得価額は、当該資産の購入の代価と当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額となります。
この当該資産の購入の代価とは、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税等その資産の購入のために要した費用をいい、当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額には、例えば、据付費等が該当しますので、これらの費用が美術品等の取得価額に含まれることになります(法令54①)。

Q9. 建物のエントランスや会議室、役員室に展示している美術品等は、事業の用に供しているものと考えられますが、現在、展示を休止して倉庫等に保管されている美術品等は、事業の用に供していることにならないのでしょうか?

A. 減価償却資産に該当する美術品等が装飾や展示に用いられている場合には、通常、事業の用に供しているものと考えられます。
お尋ねのように、倉庫等に保管され現在展示を休止している美術品等であっても、その休止期間中必要な維持管理が行われており、いつでも展示可能な状態にあるものについては、事業の用に供していることになります(法基通7-1-3)。

参考

改正後の通達を整理すると以下のとおりとなります。

※ 表のはみ出した部分はスクロールしてご覧ください。

1点当たりの取得価額が100万円未満 原則として、減価償却資産
(注)「時の経過によりその価値の減少しないことが明らか」である場合には、
非減価償却資産に該当
1点当たりの取得価額が100万円以上 原則として、非減価償却資産
(注)「時の経過によりその価値の減少することが明らか」である場合には、
減価償却資産に該当