現在の予定ですが、平成31年(2019年)10月1日から消費税の改正を実施予定ですが、POINTは次の3つです。
Ⅰ 消費税率の改正
・消費税率の10%への引き上げ
・飲食用品の販売(種類及び外食サービスを除きます)には8%の軽減税率を適用
・定期購読契約による週2回以上発行する新聞の販売には8%の軽減税率を適用
Ⅱ 請求書等の記載方式の改正
・消費税率が10%と8%に区分して記載する「区分記載請求書等記載方式」への変更
Ⅲ 経過措置
・消費税率の8%から10%へのスムーズな移行のために、一定の取引について経過措置を設けています
Ⅰ 消費税率の改正
消費税法は平成元年4月から施行し、当初の税率は3%でした。その後、地方消費税の創設や2度の税率改正を行い、現在の税率は8%(うち地方消費税1.7%)です。消費税率の過去約30年間の変遷は次の通りです。
平成元年(1989年)4月1日~:3%(消費税3%、地方消費税0%)
平成9年(1997年)4月1日~:5%(消費税4%、地方消費税1%)
平成26年(2014年)4月1日~:8%(消費税6.3%、地方消費税1.7%)
平成31年(2019年)10月1日~:標準税率10%(消費税7.8%、2.2%)、軽減税率 8%(消費税6.24%、地方消費税1.76%)
※ 平成27年10月1日の10%への引上げは景気判断条項で平成29年4月1日に延期されました。さらに平成28年11月には再度延期され、現在は平成31年(2019年)10月1日に施行の予定です。
従来の3%~8%までの消費税率の改正では全てが単一税率でしたが、平成31年(2019年)10月1日からは、標準税率と軽減税率の2段階税率になります。標準税率は消費税の課税対象取引に対して新標準税率10%を課します。更に、軽減税率として一定の取引に対して8%を課します。
なお、認可保育所、こども園における児童への飲食料品の提供は児童福祉法に規定するサービスで本来が消費税は非課税取引なので、標準税率や軽減税率という議論はありません。
軽減税率(8%)の対象は次の2品目です
- 酒類・外食サービスを除く食品表示法に規定する飲食料品
- 定期購読契約に基づいて一定の題目で週2回以上発行する新聞で、政治・経済・社会・文化等に関する一般社会的事実を掲載する新聞
軽減税率(8%)の対象品目の細目
飲食料品
飲食料品(食品表示法に規定する食品)の譲渡
対象
テイクアウト、宅配
● ファーストフード店でのテイクアウトは軽減税率適用
● テイクアウトか店内で飲食するかは飲食料品を提供する時点(取引を行う時点)で判断する
● 店内飲食が出来る寿司店のお土産でのお持帰りは軽減税率適用
※ 寿司店での店内飲食(カウンターやテーブル)は外食サービスに該当し標準税率適用
有料老人ホーム等で行う飲食料品の提供
● 介護保険の対象外で一定額以下で提供する食事は消費税の課税対象で軽減税率適用
※ 有料老人ホームやサ高住における食事の提供は、原則介護保険の適用外
その他
● 自動販売機でのジュース、菓子等の販売はその場で飲食させる役務の提供は行っていないので、飲食料品の販売で軽減税率適用
● ノンアルコールビールや甘酒保販売は種類の該当しないので軽減税率適用
対象外
酒類
● 発泡酒や食品の材料になるワイン・みりん・料理酒等も酒類に該当し軽減税率の対象外
外食サービス
● セルフサービスの飲食店については、椅子、テーブル等の飲食設備を備えているので食事の提供に該当
● 店内飲食とテイクアウトの判断は、取引時点、即ち飲食料品の提供を行った時点で判断する
● 社員食堂、学生食堂は食事の提供に該当し標準税率
※ 認可保育所やこども園の職員である保育士等に提供する昼食については、児童福祉法で定める保育事業の一環として消費税は非課税で取扱う(軽減税率の適用判定対象外)
● 認可保育所やこども園で利用者以外の保護者等や来客者に提供する昼食は、外食サービスに該当し標準税率適用
● コンビニ等のイートイン・コーナーでの飲食を前提として提供する場合には軽減税率の対象外
● コンビニ等でイートイン・コーナーの利用か持ち帰りか判断できない場合は顧客に意思確認
ケータリング
● ケータリングは、相手方が指定した場所において行うサービス提供を伴う飲食料品の販売で、単に飲食料品を届けるだけの宅配・出前等(軽減税率の対象)とは異なる
有料老人ホーム等で行う飲食料品の提供
● 介護保険の対象外で一定額を超えて提供する食事は消費税の課税対象で標準税率適用
● 介護保険の対象外で提供する特別な食事は消費税の課税対象で標準税率適用
新聞
一定の題号を用い、政治・経済・社会・文化等に関する一般社会的事実を掲載する定期購読契約に基づき週2回以上発行する新聞の購読
対象
● 一般紙全般 ⇒ 一般社会的事実を掲載する定期購読契約で週2回以上発行
● スポーツ新聞、業界紙で定期購読契約に基づいて週2回以上発行するものも対象
対象外
● 駅売りの新聞等の定期購読契約に基づかない新聞の販売
● コンビニエンスストアでの定期購読契約に新聞の販売
● インターネットを通じて配信する電子版の新聞は、電子通信利用役務の提供に該当
Ⅱ 請求書等の記載方式の改正
請求書を発行する事業者の改正後の消費税の取扱いは、従来の請求書から消費税率を10%と8%に区分して記載する「区分記載請求書等記載方式」へ変更して、請求書等を発行する必要があります。
消費税は間接税なので、その負担者は最終消費者で納税はしません。間接事業者が納税します。税務署に納税する税額は最終消費者に至るまでの各事業者が「課税売上高に係る消費税額」から「課税仕入高に係る消費税額」を控除した金額です。ここで最終消費者とは事業者ではない個人が該当しますが、金銭的な付加価値を生み出すことを目的としない認可保育所やこども園も最終消費者とみなすことになります。
設例
消費税率は8%で計算しています。
上記の通りに、最終消費者が負担する112の消費税をA事業者が80、B事業者が16、C事業者が16をそれぞれ税務署に納税します。その納税額は、課税売上に係る消費税額から課税仕入に係る消費税額を控除して計算しますが、現行の納税額の計算では、消費税率は単一税率でした。今後は標準税率(10%)と軽減税率(8%)の多段階税率を適用するので、全ての課税取引を消費税率の異なるごとに区分しなければならず、複数税率に対応するための「区分記載請求書等保存方式」が導入されることになりました。なおこの度の「区分記載請求書等保存方式」は平成35年(2023年)10月1日前までの簡便的な記載方法で、以後は「適格請求書等保存方式」という本則を導入する予定です。
平成31年(2019年)10月1日以後の請求書等の記載内容は次の通りになります。
- 請求書等の作成者の氏名または名称
- 課税資産の譲渡等(資産の譲渡やサービスの提供)を行った年月日
- 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
- 軽減対象課税資産の譲渡等である旨 ※
- 課税資産の譲渡等の対価の額(消費税相当額を含む)
- 税率の異なるごとに合計した対価の額 ※
- 交付を受ける者の氏名又は名称
消費税率8%の単一税率の場合には4と6の記載が不要でした。今後は請求書等の発行者は上記の8項目の記載要件を満たして請求書を発行しなければならず、請求書等を受取る側は、上記7項目の記載が備わっているかを確認する必要が生じます。勿論、帳簿等には「軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨」の記載が必要です。
但し、上記7項目のうちに4と6の記載が欠落している場合には交付を受けた事業者の側で追記することが出来ます。交付を受けた事業者側が追記できる項目はあくまでも4と6に限ります。
Ⅲ 経過措置
消費税率の8%から10%への移行日である平成31年10月1日をもって即日に10%を適用することが困難な取引について経過措置を設けています。指定日(平成31年4月1日)と適用開始日(平成31年10月1日)を目安に、契約及び支払について消費税の負担を抑制するには、平成31年度の予定を早期に考慮した計画が必要です。消費税率改定時の一時的な課題ではありますが、平成31年10月以降の職員の通勤定期、固定資産の購入、工事の契約、賃貸借契約、定期購読契約によって提供を受ける書籍等他について検証が必要です。
旅客運賃等
H31.10.1(適用開始日)以後にサービス提供する旅客運賃(電車・バス・飛行機・船舶等)、映画・演劇の入場料、美術館・遊園地の入場料、東京オリンピック・パラリンピックの入場料、ラクビーワールドカップの入場料他
H26.4.1~H31.9.30までに領収しているもの → 旧税率(8%)を適用
H31.10.1(適用開始日)以後から領収するもの → 新税率(10%)を適用
電気料金等
H31.10.1(適用開始日)以前から継続契約供給している電気料金等で、H31.10.1~H31.10.31までの間に料金の支払いを受ける権利確定するもの → 旧税率(8%)を適用
請負工事等
H31.4.1(指定日)前に締結した工事請負契約に係る工事等でH31.10.1以後に完成引渡等が実施されるもの
→ 旧税率(8%)を適用
※一般的なマンション購入は請負でなく譲渡になるので経過措置の適用外なので注意
資産の貸付
H31.4.1(指定日)前に資産の貸付けに係る契約を締結し、適用開始日(H31.10.1)前から引続き貸付を行っている場合のH31.10.31以後に行う資産の貸付
→ 旧税率(8%)を適用
指定役務の提供
冠婚葬祭のための施設の提供その他の便益の提供等に係る役務の提供をいい、冠婚葬祭互助会による結婚式や葬式等の指定役務の提供に限られ、指定日までに契約しH31.10.1(適用開始日)以後に行う役務の提供
→ 旧税率(8%)を適用
予約販売に係る書籍等
H31.4.1(指定日)前に締結した不特定多数の者に対する定期継続供給契約により提供する書籍その他物品に係る対価をH31.10.1前に受領している場合でH31.10.1以後に譲渡している場合
→ 旧税率(8%)を適用
特定新聞
発行者が指定する発売日がH31.10.1前で、その譲渡がH31.10.1(適用開始日)以後であるもの
→ 旧税率(8%)を適用
※ 日刊新聞や雑誌は対象外ですが、週刊・月刊の業界紙や日経関係の新聞が該当します。
通信販売
H31.4.1(指定日)前に販売価格等の条件を提示又は提示の準備を完了し、H31.10.31前に申込を受け、H31.10.1以後に商品の販売が行われる場合
→ 旧税率(8%)を適用
有料老人ホームにおける役務の提供
H31.3.31(指定日)までに締結した有料老人ホームに係る終身契約に基づきH31.10.1前から同日以後引続き介護に係る役務の提供を行っている場合におけるH31.10.1以後に行われる入居一時金に対応する役務の提供
→ 旧税率(8%)を適用
特定家庭用機器再商品化(家電リサイクル法)に規定する再商品化等
エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機等の特定家庭用機器の廃棄に係る対価をH31.10.1前に受領し、当該対価に係る再商品化(リサイクル作業)がH31.10.1(適用開始日)以後に行われるもの
→ 旧税率(8%)を適用
※消費者がリサイクル料を適用開始日前に支払い、メーカーがリサイクル廃棄処分を行う