1. 会計基準・注解の記述
第4章 第4第3項
~ 会計基準より ~
国庫補助金等特別積立金には、施設及び設備の整備のために国又は地方公共団体等から受領した補助金、助成金及び交付金等(以下「国庫補助金等」という。)の額を計上するものとする。
(注11)国庫補助金等特別積立金への積立てについて
~ 会計基準注解 ~
会計基準第4章第4第3項に規定する国庫補助金等特別積立金として以下のものを計上する。
① 施設及び設備の整備のために国及び地方公共団体等から受領した補助金、助成金及び交付金等
② 設備資金借入金の返済時期に合わせて執行される補助金等のうち、施設整備時又は設備整備時においてその受領金額が確実に見込まれており、実質的に施設整備事業又は設備整備事業に対する補助金等に相当するもの
また、・・・国庫補助金等特別積立金の積立ては、・・・国庫補助金等の収益額を事業活動計算書の特別収益に計上した後、その収益に相当する額を国庫補助金等特別積立金積立額として特別費用に計上する。
2. 「国庫補助金等」の定義
上記の会計基準及び注解に示す「国庫補助金等」とは、次の通りです。
イ.国・地方公共団体から受領した補助金、助成金及び交付金
「社会福祉施設等施設整備費の国庫負担(補助)について」(平成17年10月5日付厚生労働省発社援施第1005003号)に定める施設整備事業に対する補助金等で、具体的には、固定資産及び固定資産以外の備品等の取得を目的として、国・地方公共団体から受領した補助金、助成金及び交付金です。
ロ.民間公益事業による助成金
国庫補助金等には民間公益事業による助成金も含まれます。具体的には、中央競馬馬主社会福祉財団、財団法人JKA(旧日本自転車振興会)、共同募金会(受配者指定寄附金以外の配分金)等
ハ.施設整備借入金の返済補助金等
設備資金借入金の返済時期に合わせて受領する補助金のうち、施設整備時等にその受領金額が確実に見込まれて、実質的に施設整備事業又は設備整備事業に対する補助金等に相当するもの
3. 固定資産の取得に対応する国庫補助金等特別積立金の積立
国庫補助金等を受領して固定資産又は固定資産以外の消耗備品等を取得した場合に積立てます。
説例
取得した固定資産の価額 1,000,000円、受領した国庫補助金等の額 800,000円
※ 表のはみ出した部分はスクロールしてご覧ください。
貸方科目 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|
<固定資産を取得> 固定資産(資金:固定資産取得支出) |
現金預金 | 1,000,000円 |
<国庫補助金等を取得> 現金預金 |
施設整備等補助金収益 (資金:施設整備等補助金収入) |
800,000円 |
<積立処理> 国庫補助金等特別積立金積立額 |
国庫補助金等特別積立金 | 800,000円 |
4. 国庫補助金等特別積立金の積立の理由と処理方法
2,000万円の固定資産を購入に当たり、1,000万円の補助金を受領しました。購入した固定資産の本年度の減価償却費は200万円(耐用年数10年)とします。次の通りになってしまいます。
※ 表のはみ出した部分はスクロールしてご覧ください。
勘定科目 | 資金収支計算 | 事業活動計算 | 備考 |
---|---|---|---|
補助金収入(収益) | +1,000万円 | +1,000万円 | |
購入支出(費用) | ▲2,000万円 | 0円 | |
差額(損益) | ▲1,000万円 | +1,000万円 | |
減価償却費 | 0万円 | ▲200万円 | 事業活動計算では過大な損益が残る |
差引計 | ▲1,000万円 | +900万円 |
【問題点】
資金収支計算では、補助金収入も固定資産取得支出も全額表示するので、資金の収支差額は正確に計算及び表示出来ます。事業活動計算では、固定資産の取得のための補助金等に係る収益は1,000万円計上しますが、その固定資産に係る費用は減価償却費200万円しか計上していません。
【解決】
補助金収益1,000万円は固定資産の耐用年数(10年間)にわたって効果が及ぶので、一時に1,000万円の収益を計上しないで、各年100万円ずつ10年間に渡っての計上が合理的です。毎年の損益は▲100万円になります。
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勘定科目 | 資金収支計算 | 事業活動計算 | 備考 |
---|---|---|---|
補助金収入(収益) | +1,000万円 | +1,000万円 | |
購入支出(費用) | ▲2,000万円 | 0万円 | |
差額(損益) | ▲1,000万円 | +1,000万円 | |
国庫補助金等特別積立金の積立額 | 0万円 | ▲1,000万円 | |
国庫補助金等特別積立金の取崩額 | 0万円 | +100万円 | 10年間で収益計上 |
減価償却費 | 0万円 | ▲200万円 | 10年間で費用計上 |
差引計 | ▲1,000万円 | ▲100万円 |
5. 固定資産以外の備品等の取得に対応する国庫補助金等特別積立金の積立
説例
8万円の備品と5万円の消耗品を全額施設整備の補助金で取得した。
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貸方科目 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|
<国庫補助金等を取得> 現金預金 |
施設整備等補助金収益 (資金:施設整備等補助金収入) |
130,000円 |
<備品等を取得> 消耗器具備品費 (資金:消耗器具備品費支出) |
現金預金 | 130,000円 |
<積立処理> 国庫補助金等特別積立金積立額 (特別増減の部の費用) |
国庫補助金等特別積立金 | 130,000円 |
※ この度の新会計基準では、10万円未満の備品や消耗品等の取得についても設定の対象とします。
※ 10万円未満の消耗品費を対象にして「国庫補助金等特別積立金」を積立てた場合には、同時(即時)に取崩の処理を行います。
6. 設備資金借入金の返済のために受領する補助金等に係る国庫補助金等特別積立金の積立
施設整備又は設備整備のための借入金の償還に充てる補助金は、実質的に「施設整備等の国庫補助金等」に相当するので、固定資産等の取得のための国庫補助金等と同様に取扱います。積立時期は実際に償還補助を受けたときで、実際の補助金額を積立てます。
説例
施設整備のための借入金の元金返済額250万円に充てる償還補助金100万円を受領した場合
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貸方科目 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|
国庫補助金等特別積立金積立額 | 国庫補助金等特別積立金 | 1,000,000円 |
7. 国庫補助金等特別積立金の取崩と処理方法
国庫補助金等特別積立金は、国庫補助金等の効果の発現する期間にわたって取崩を行い、事業活動計算書にサービス活動費用の控除項目として計上します。具体的には、支出対象経費(主として減価償却費)の期間費用計上額に対応して国庫補助金等特別積立金取崩額を計算します。
説例
国庫補助金等特別積立金100万円の、本年度の取崩額10万円の仕訳は次の通りです。
対象固定資産の耐用年数は10年とします。(耐用年数10年の定額法の償却率=0.100)
取崩額の計算 1,000,000円×0.100=100,000円
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貸方科目 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|
国庫補助金等特別積立金 | 国庫補助金等特別積立金取崩額 | 100,000円 |
8. 設備資金借入金の返済のために受領する補助金等[6]に係る国庫補助金等特別積立金の取崩
借入金の償還補助金に係る国庫補助金等特別積立金は期間収益として毎期取崩します。取崩金額は償還補助予定総額を基礎として耐用年数にわたって国庫補助金等特別積立金取崩額をサービス活動費用の控除項目として計上します。
説例
施設整備借入金の償還補助総額(当初の予定補助総額1,500万円)を15年に渡って毎年100万円ずつ受領しています。本年度の取崩しの仕訳は次の通りです。
(耐用年数15年:定額法償却率0.067)15,000,000円×0.067=1,005,000円
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貸方科目 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|
国庫補助金等特別積立金 | 国庫補助金等特別積立金取崩額 | 1,005,000円 |
9. その他の取崩
国庫補助金等特別積立金の設定対象の固定資産を除却・売却等した場合には、その全額を取崩し、事業活動計算書の特別増減の部の控除項目として表示します。